DETAILS OF “SOUVENIR JACKET” Vol.002 / スカジャンの横振り刺繍

TEXT: テーラー東洋 企画総括・スカジャン研究家 松山達朗 (TATSURO MATSUYAMA)

熟練の職人による横振り刺繍で迫力あるスカジャンの図案が描き出される。

 

スカジャンがまだ「スーベニアジャケット」や「鷲虎龍の刺繍ジャンパー」と呼ばれていた時代。古くから絹織物産業が盛んであった桐生の刺繍職人たちのもとには、多くのスカジャンの発注が舞い込んでいた。当時は戦後の混乱期、より多くの仕事を得るため寸暇を惜しんでミシンを踏み、皆が競うように刺繍をこなして技術を磨いていたのである。

 

スーベニアジャケットに用いられる刺繍には高度な技術を要する。一般的な自動ミシンではなく、「横振りミシン」と呼ばれる特殊なミシンを使用するためだ。足元のペダルで速度、右膝のレバーで針の振り幅を調節しながら、生地を手で巧みに動かし刺繍を施していく。刺繍の出来栄えを左右するのは刺繍の振り幅や針足、刺繍糸の色など職人の技術と感覚によるところが大きい。

 

桐生では現在でも、当時を知る刺繍職人が技術を継承すべく活躍しており、テーラー東洋「スペシャルエディション」のスカジャンは、1950年代当時からスーベニアジャケットの刺繍を手がけてきた職人が針足や運針などを監修し、製品化されている。